私はこなつを護る一振りの剣。

私はただそれだけの為に存在している。

そう、私には感情や思考など必要ない、
大切なのはこなつを全ての悲しみ、苦しみから護る事のみ。

ただの物質、冷たく重い鋼の剣、それで良い。

無駄な感傷など意味がないし煩わしいだけだ。

だから、こんな風に考えてしまう心も無くて構わない。

無感情に機械的にただ機能すれば良い。

心などもった所でなんになる? そんなもの百害あっても一理もない。

ああ、心があれば迷いが生じる。

迷いは判断を鈍らせ、事故を招く。

何かに心動かされる事などあってはならない、
私はただの物質、物言わぬ剣、それで良い、そう信じていた。

その為だけに私は生み出されたのだから当然の事だ。

その役目を放棄するという事は、
すなわちそれは私自身の存在を否定する事に繋がる。

それだけはあってはならない事。

なのに、最近私の周りをうろつき感情を逆撫でる存在が現れた。

冷たい水の底に沈めた心をすくい上げようとする馬鹿者が。

私はそれがたまらなく我慢ならない、
この私をそっとしておいてくれない不愉快さと、
そしてそう思いながらも心の何処かでそれを嫌がってはいない自らの感情が……
私はここにいる。

それは剣であるからこそ許された代価。

だから、こんな風に翻弄されてはいけない、
出来る事なら今すぐ私からこの心を抜き取って欲しい、
私が私であり続けられるために、
この心がおかしな欲を持ってしまう前に。