澄み切った空はどこまでも青く、流れる風は私の頬を撫でつける。

空を飛ぶのは気持ちが良い、歩いている時と体重が変わるわけないのに、
こうして飛んでいると身も体も軽くなったような気がして、
どこまでも高く飛んでいけそう。

今日はなんだか朝から気分も良いし、なおさらそう思えてしまう。

今ならあの真っ白な雲よりも高い所へ行けそうな気だってしちゃう。

でも、私はそれをしようとは思わない、どこまで高く飛べるのか、
どこまで私は行く事が出来るのか興味はあるけど、
それをしようと思ったらひとりで行くしかないから、
だって羽が生えているのは、私となつきちゃんだけで、
なつきちゃんはこのみちゃんから離れられない。

だから、空を一緒に飛べる友達は誰もいない。

こうして空をお散歩するのは大好きだけど、
それでもやっぱりみんなと同じ大地でお喋りをしたり遊んだりする方が、
ずっと楽しいから。

うん、ひとりでいるのは気楽、
だけどとても心細い、
自分だけが世界からはみ出してしまったんじゃないかって、
みんなに忘れられちゃうんじゃないかって、
そんな風にたまにだけど思ってしまうから。

どうしてそんな悲しい事を思ってしまうのかわからないけど、
無性に何かに満たされない気分に襲われる瞬間がある。

自分で言うのもおかしいけれど、
私は随分多くのものに恵まれているというのに……
だからなのかな、大好きなみんなに必要とされるような人間になりたい、
そうあの人にとって大切な存在になれたら、そう強く思ってしまうのは……
飛ぶのは気持ちが良い、だけど心の底ではこう思ってる、
あの人が常に傍らにいてくれるのなら、
この翼も必要ないのかもって……
そんな事を考えていると、通学路を見知った男の子が歩いているのが目に入った。

そう『彼』だ。

私は無意識に笑っていた、
そしてそれと同時に広げていた翼を折りたたみ地上へと降りていく、
彼のいるその場所へ。